インバウンド対策とは|日本における経緯と対策方法

2019.06.04

インバウンド対策とは①|日本におけるインバウンドのはじまり

インバウンドとは本来「入ってくる」、「内向き」といった意味を持っており、最近では主に「訪日外国人観光」を指す言葉として頻繁に聞かれます。また、インバウンドという言葉が広く一般にも認知されるようになったのはここ10年ほどですが、日本におけるインバウンド対策は意外にも古くから行われていました。

日本で最初の外客誘致の民間機関「喜賓会」が誕生したのは1893年(明治26年)で、これは当時の実業家・渋沢栄一氏が国際観光事業の必要性と有益性を唱えて訪日外国人をもてなすために設立したものです。一方で、1912年(明治45年)にはかつての日本交通公社、現在のJTBの前身となるジャパン・ツーリスト・ビューローが創設され、当時の鉄道省が主導し、外国人への乗車券の販売や海外の委託販売所の設置など、訪日外国人の誘致を行っていました。

つまり、今日の官民挙げて盛り上がりを見せている観光立国政策や、外客誘致のためのプロモーション活動などのインバウンド対策は、すでに戦前期からそのひな型があったことになります。

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インバウンド対策とは②|日本におけるインバウンドの低迷期

戦後になっても大阪万博開催の1970年まではインバウンドの伸長が続きますが、この年を境にそれまで先進的ともいえた日本の訪日外国人誘致はここで成長が鈍化してしまいます。これは日本人によるアウトバンド、いわゆる海外旅行がインバウンドと逆転したからでした。具体的な要因としては観光目的の海外渡航が自由化されたことや、日本の観光業界が国内市場に軸足を移したこと、そして円高などが挙げられます。

その後、1996年に当時の運輸省により「ウェルカムプラン21」が策定され、訪日外国人旅行者を倍増させることが政府の目標となります。さらに2002年の日韓サッカーワールドカップ大会開催が日本のインバウンド対策において追い風になりましたが、アジアへのアウトバウンドが増加するなどして、双方の開きが埋まることはありませんでした。

 

インバウンド対策とは③|日本におけるインバウンドの現在までの流れ

現在のインバウンド対策の流れが生まれたのは2003年、政府の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」によるものです。これは、政府が国を挙げて観光振興に取り組み、観光立国を目指すというもので、結果、2013年には当時の目標であった訪日外国人客数年間1,000万人を突破し、新たに2020年までに2,000万人、2030年までには3,000万人という新たな目標が掲げられました。同時期には東京オリンピック・パラリンピック開催が決定し、円安の効果もあってインバウンド対策の追い風となったのです。

このため、2015年には訪日外国人客数が2,000万人にあと一歩と迫るなど、大阪万博開催の1970年以来45年ぶりに入国者数が出国者数を上回り、さらに予想を上回るペースで訪日外国人客数が増加しました。そこで現在政府では2020年に4,000万人、2030年に6,000万人とその目標を上方修正しています。

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インバウンド対策とは④|インバウンドの重要性

では、なぜ昨今、国を挙げてインバウンド対策が重要視されるのでしょうか。

それは訪日外国人客数の増加に伴って、すでに観光業をはじめ、宿泊、飲食、サービス、小売といったさまざまな業界に莫大な利益をもたらしているからです。例えば2017年の訪日外国人観光客は累計2,869万人となっていますが、現在の日本人の20代および30代の総人口は2,600万人ほどにすぎません。

また、少子高齢化によって人口が減少に転じている日本において、仮に人口が1人減ったとしても、訪日外国人が8人訪れればその経済的な損失を埋められるともいわれています。

このように世界の中でも高齢化社会の先頭を走り、人口減少問題が顕在化している日本の経済や産業にとって、多くの外国人が日本を訪れるインバウンド対策とは無視できないものなのです。

 

インバウンド対策とは⑤|インバウンドの現状

インバウンドで日本を訪れる外国人はその数字をみれば増加傾向にあるのが明確ですが、国によってその規模や旅行ルートの傾向はさまざまです。

 

日本を訪れる外国人が多い国や地域

2018年の訪日外国人数は3,100万人を超えていて、1位は中国の800万人、次いで韓国の750万人、台湾、香港と続き、東アジアだけで全体の7割を占めます。さらに直近では東南アジアからの訪日外国人客も堅調な伸びを示し、タイが初めて100万人の大台を突破しました。このほか欧米からの訪日外国人客は全体の1割程度で、中でも最も多いのはアメリカの150万人です。

このうち中国人の訪日外国人客数が急増しているのには、中国と日本双方の国の施策が大きく関わっています。中国ではかつて仕事や留学などの目的以外では自由に海外に渡航することができませんでしたが、1997年に団体での海外旅行が解禁され、中国の通貨「人民元」の価値が上昇したこともあり、海外渡航者が急増したのです。

一方日本では、かつては中国人へのビザ発給に慎重だったものの、2000年に団体旅行者へのビザ発給を解禁し、2009年には、年収制限を設けた上で、富裕層の個人観光客へのビザ発給も解禁しました。その後さらに所得制限を緩和するなどインバウンド対策の一環として積極的に中国人観光客を積極的に呼び込んでいるため、特に中国人の訪日外国人客数が増加しているのです。

 

国別の訪日旅行の特徴

訪日外国人客はその国籍によって訪日旅行の傾向が異なります。これは団体旅行か個人旅行かといったことだけでなく、訪問先や目的、滞在日数などにも及びます。そこで、訪日外国人数上位の国々の特徴をそれぞれみてみましょう。

中国…これまでの団体旅行から個人旅行が増加し、日本特有の自然環境や温泉を楽しむことを目的とする傾向。

韓国…節約志向の個人旅行が中心で、日本の音楽やアニメが人気。

台湾…親日派が多く、地方にも訪れる。若年層は日本のポップカルチャーにも関心が高い。

香港…体験重視の個人旅行が多く、リピーター率も高い。

タイ…増加傾向にある東南アジアの中でも来日客数が急増している。主に、日本の四季の風景などを楽しむのが目的。

アメリカ…滞在期間が長く、物品の購入などよりも歴史や文化に触れる旅を好む傾向。

このように、日本への旅行目的にはそれぞれ国によって違った特徴がみられます。

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訪日外国人の行動パターン

増加した訪日外国人には、行動パターンにもいくつかの顕著な特徴がみられます。そのひとつが旅行ルートで、定番となっているのは、東京・箱根・名古屋・大阪・京都を巡る「ゴールデンルート」と呼ばれる観光周遊ルートです。また最近では名古屋または松本から飛騨高山を経由して北陸へ向かう「サムライルート」、福島県から東京都や栃木県、茨城県の4都県を結ぶ広域観光ルートとして、「ダイヤモンドルート」なども登場しています。

また、アジアを中心にリピーターが多いのもインバウンドの特徴です。特に韓国、台湾、香港などの訪日外国人は、すでに訪日経験のあるリピーターが多いとされています。

彼らは団体旅行などで最初に訪日すると、ゴールデンルートをはじめとした定番の観光地を巡ったあと、FITとして再び日本を訪れることが少なくありません。

このFITとは海外個人旅行を指し、友達や家族と個人で旅行を手配する観光客をいいます。現在ではSNSやインターネットの普及もあり、情報の入手が容易なため、こうしたFITのような個人旅行のハードルも下がっているのです。

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インバウンド対策とは⑥|インバウンド対策の方法

日本を訪れる外国人の国や地域によっても旅行パターンは異なりますが、擬態的にはどのようにインバウンド対策を行えばよいのでしょうか。そこで、インバウンド対策で必ず必要となる方法をみてみると、主に「多言語対応」、「集客」、「サービス」の3つが挙げられます。

 

インバウンド対策における多言語対応

インバウンド対策とはいっても、まずは訪日外国人あるいは訪日を検討している人々とコミュニケーションが取れなくてはなりません。このため、インバウンド対策において最初に取り掛かるべきは多言語対応です。

ところが、多くの企業や自治体、団体などではWebサイトを開設しているものの、多言語に対応しているのはごく一部に限られます。しかし、インバウンド対策においては、Webサイトの多言語化は必須です。また、実店舗を運営しているのであれば、インバウンド対策として外国語での接客が必要になってきます。

こうした多言語対応において、内部に適当な人材を抱えていない場合、インバウンド対策における多言語対応に関しては翻訳会社への外注や、スタッフの育成が必要です。

また、Webサイトやスタッフに限らず、飲食店ならメニュー、宿泊施設では案内表示、小売店ならPOPといったように、インバウンド対策の一環として接客におけるさまざまな要素を多言語化しなければなりません。

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インバウンド対策における集客

訪日外国人を受け入れるために多言語化を行ったら、次に取り組むのは集客です。

Webサイトを利用すれば、低予算でも費用対効果の高い集客の可能性がありますが、もちろん多言語化は大前提で、さらにそれだけではインバウンド対策として十分ではありません。SNSへの投稿、SEO対策、リスティング広告といった、継続的な宣伝も必要です。

また、インバウンド対策に一定の予算が見込めるのであれば海外での集客も欠かせません。具体的には現地の旅行会社にプロモーション企画を持ち込んだり、展示会へ出展するなどのほか、有名ブロガーにPR記事の作成を依頼するといった方法も考えられます。

 

インバウンド対策におけるサービス

サービスに関しても既存のものを多言語化しただけではインバウンド対策にとっては不十分です。例えば、ある宿泊施設では、一泊二食付きのプランを食事なしのプランに変更したところ、訪日外国人客が増加したという事例もあります。つまり、サービス自体も訪日外国人のニーズに合わせて柔軟に対応しなければならないのです。

また、サービスという面では、訪日外国人にとってメリットの大きい免税対応、利便性を高めるためのクレジットカードや電子マネー、仮想通貨といった決済手段の多様化などもインバウンド対策として求められます。

 

インバウンド対策とは⑦|今後のインバウンドの展開

東京オリンピックの開催が迫る現在、これを追い風に日本のインバウンド市場が盛り上がっているのは事実です。それだけに、オリンピックの終了と同時に訪日外国人数が減少に転じるのではないかとも懸念されています。しかしながら、日本のインバウンド需要はオリンピックのみが要因となって増加しているのではありません。世界的にみれば東南アジアや中南米といった国々を中心に旅行者数は依然として増加を続けており、2030年にはその総数が10億人に達するともいわれています。さらに、過去のオリンピック開催地ではオリンピックの開催後も旅行者が増加するという傾向もみられるのです。

つまり、政府の掲げる2030年の訪日観光客数6,000万人という目標もあながち非現実的なものではありません。そこでこの目標を確実なものとするためには、今回取り上げたインバウンド対策を引き続き推進しながら、より多くのインバウンド需要を獲得するために、インバウンドインフラの整備やサービスの展開を推進していくことが重要であり急務といっていいでしょう。