海外法人とは|設立の手順や目的など

2019.04.15

海外法人を設立する意味とは

海外法人とは、登記する国において営利行為を行いながらも、事業所や法人の代表者は、その国以外を本拠としている法人を指します。

日本においては、新会社法施行が施行される以前には、アメリカを中心に海外に法人を設立するケースが多くみられました。これは、アメリカでは非居住者であっても会社設立が可能で、1950年代にはすでに最低資本金制度が撤廃されていたからです。

一方、当時日本国内では株式会社で1,000万円、有限会社で300万円という多額の資本金を準備しなければなりませんでした。つまり、日本企業がアメリカにおいて海外法人を設立する一定のメリットがあったのです。

 

しかしながら、2006年以降、日本においても最低資本金の規制が完全に撤廃されたことから、現在では税制上の観点から、世界的にみても高い水準にある日本の法人税率を回避するため、日本より法人税率の低い諸外国に法人を設立することがその主な目的のひとつとなっています。

https://pixabay.com/

出典:https://pixabay.com/

 

 

海外法人の設立するには法人登記代行の利用が一般的

では、海外法人は実際にどのようにして設立したらよいのでしょうか。

 

まず海外で会社を設立する場合には、駐在員事務所や子会社となる現地法人あるいは支店など、さまざまな形態が考えられますが、いずれにしても日本と同様に法人登記が必要となります。ただし、海外法人設立に関わる申請手続きは、複雑なばかりではなく言語も異なるため、日本国内で法人を設立するよりも難易度が高いのは事実です。

 

また、法人登記については国際的な基準が設けられておらず、進出を検討している国や地域の制度に則って手続きを行う必要もあるため、個人で海外法人設立に関わる申請手続きを進めるのは極めて困難といわざるをえません。

 

そこで、海外法人の登記の際には、司法書士や公認会計士、税理士といった専門家に依頼する「法人登記代行」を利用するのが一般的です。

 

 

海外法人の設立の手順

法人登記代行を利用し、海外法人を設立すれば、煩雑な手続きを依頼できるのをはじめとして、繰り返し現地に赴く必要もなく、コスト的にも時間的にも有利です。

その上で、海外法人の設立ではそれぞれ次のような要素を決定していきます。

https://pixabay.com/

出典:https://pixabay.com/

 

海外法人を設立する地域の選択

海外法人を設立する場合、進出する国や地域によって税金やそれに関わる法律も大きく異なります。

たとえばアメリカなら、「デラウェア州」、「ハワイ州」、「ネバダ州」などにおいては、州以外の活動に関しては税務申告が不要となっており、州税も非常に少ないといった特徴があります。海外法人を設立では、こうしたよりよい条件を選択することが、ビジネスを成功させる近道となるでしょう。

 

法人の商号の決定

海外法人に限ったことではありませんが、法人設立には商号を決める必要があります。英語圏であれば、末尾は「corporation」、「incorporated」、「limited」などが一般的です。

ただし、すでに登録されている商号は使用することができないため、事前にいくつか候補を用意しておく必要があります。

 

資本金の決定

海外法人を設立するには、アメリカや日本などをはじめとして、最低資本金が撤廃されている国もありますが、便宜的であっても事前に資本金額を決定しておかなければなりません。

また、国や地域によっては、資本金額が規定以下であれば、申請手数料が安くなることもあります。

 

一方で、法人として業績を伸ばすことができれば、将来的に資本金の増額も可能です。

 

取締役および役員の決定

取締役に関しては、一人でも法人設立が認められる場合や、株主と同数 あるいは3人以上と定められている場合など、これも国や地域によってさまざまです。

また取締役以外にも、「会計」や「秘書」などが必要ですが、こうした役割は取締役が全てを兼任することもできます。

 

事業目的の決定

海外法人の設立では国や地域の違いに関係なく、事業目的の登記が必要です。

とはいえ、事業目的は日本の場合、登記された以外は認められませんが、シンガポールなどであれば登記した事業目的と関連のない事業であっても特別支障はありません。

 

また、アメリカでは州によって違いはあるものの、「あらゆる適法な事業目的」という選択肢が設けられていて、これならば法律に違反しない限り、あらゆる営利活動が認められることになっています。

 

決算月の決定

日本では3月が年度末となることから多くの企業が3月に決算を迎えますが、アメリカでは12月決算が大多数です。

このように、決算月は国や地域によって時期が異なります。日本国内で法人を設立するのであれば3月を決算月としてもよいですが、海外法人の場合、現地で多数を占める決算月にあわせておくほうがよいでしょう。

https://pixabay.com/

出典:https://pixabay.com/

 

法人の維持や管理活動、税務申告は誰が行うのか

海外法人の設立に関する手続きはすべて法人登記代行業者に依頼することが可能ですが、原則として法人の維持や管理活動、税務申告については設立者が行わなければなりません。

ただし、これらも法人登記代行業者に別途依頼することが可能な場合もあるので、コストなどを考慮しつつ、必要な場合には検討します。

 

 

海外法人設立のメリット・デメリット

次に、実際に海外法人を設立した場合、どのようなメリット、あるいはデメリットが存在するのでしょうか。

市場が頭打ち、もしくは縮小傾向にある日本のマーケットだけをターゲットにするのではなく、海外に進出することは単純にビジネスの拡大において有効であり、従業員など、それに携わる人々にとってもモチベーションとなります。

一方で、一定のリスクが伴うこともきちんと理解しておかなくてはなりません。

 

海外法人設立のメリット

まず、海外法人設立の最大のメリットとしては冒頭でも触れたように、税制上有利である、ということ挙げられます。

これは、国や地域によっても異なりますが、諸外国では日本よりも税制面で有利なケースがあるばかりでなく、税金が免除されることもあり、結果として収益の拡大に繋がるケースは少なくありません。

 

このほか、海外に進出するということは、日本国内では入手することのできない現地のダイレクトな情報に触れることも可能にします。

たとえ海外にビジネスを展開する場合でも、日本国内に拠点を置いていたのでは、入手できる情報はインターネットを介すなどした、間接的なものにすぎません。

しかし、現地法人を設立し、海外に進出していれば、肌で感じた情報をそのままビジネスに直結させることも可能になります。

 

海外法人設立のデメリット

メリットの一方、海外法人設立におけるデメリットとしては、日本の公的金融機関から融資を受けることができない、といったことが考えられます。これは、海外子会社として設立した海外法人は、たとえ日本国内の法人の影響下にあるとしても、名義的には独立した海外の法人であるためです。

つまり海外で設立された法人は日本の法人ではないことになり、公的金融機関が融資を行えないことになります。これは日本において資金調達をする場合、融資する側と受ける側の間に第三者が介在する間接金融が主流であるためです。

 

とはいえ、海外の場合、公募による株式や私募債を発行することによる直接金融のケースが多く、資金調達自体は比較的容易なので、この点はさほど心配は必要ありません。むしろここで懸念されるのは、直接金融による資金調達での煩雑な事務手続きとなります。

 

さらに、海外法人設立において、もっとも注意しなければならないのがカントリーリスクです。

海外進出先において、その国の政権が交代するなどし、国策の転換が行われるといったことは決して珍しいことではありません。特に政情が不安定な国などにおいては、テロの標的となることなども想定して、十分な自己防衛と、リスク管理の必要があります。

https://pixabay.com/

出典:https://pixabay.com/

 

 

租税回避の手段としての海外法人

ここまでのように、海外法人設立においては税制上のメリットを受けることが大きな目的のひとつとなりますが、具体的にはどのような方法が考えられるのでしょうか。

そこで、まず日本の法人税率をみてみると、30%とOECD加盟国や近隣アジアの法人税率と比較しても、非常に高い水準となっています。

 

このため、日本をはじめとした法人税率の高い国の企業や資産家の間では、法人税率の低い国に法人を設立し、資金をそちらに移転することで法人税や所得税を減らす、租税回避の動きがみられることが少なくありません。

そして、こうした資金を受け入れる国や地域は「タックス・ヘイヴン(租税回避地)」と呼ばれています。

 

タックス・ヘイヴンの概要

タックス・ヘイブンと呼ばれる国や地域では、西インド島のケイマン諸島のように、税率が0%など、著しく低い地域もあります。

このほかにも、バハマ、バージン諸島、クック諸島など、島国で有力な産業が育ちにくい地域では、法人に課税される税率を引き下げることで企業を誘致したり、設立も相次ぎ、その結果として、法人だけではなく、富裕層の間でも節税対策としてタックス・ヘイブンへ資産を移す動きが顕著になったのです。

 

また、タックス・ヘイブンでは規制もゆるく、干渉も少ないのが特徴で、秘匿性も非常に高く保たれていることから、法人の代表者や利益額なども外部へ漏れる可能性が極めて低くなっています。

 

さらに、タックス・ヘイブンとなっている国や地域では、その法人に対して実質的活動を求めることもありません。

つまり、いわゆるペーパーカンパニーであっても、タックス・ヘイブンを利用して節税が可能となっているのです。

https://pixabay.com/

出典:https://pixabay.com/

 

タックス・ヘイヴンの問題点

タックス・ヘイブンはこれを活用しようとする法人にとっては節税効果が大きくメリットがあります。

しかし、もともとその法人が拠点を置いていた国や国民にとっては税収が減少することになり、欧米諸国や日本においては財政悪化が懸念される中、タックス・ヘイブンを利用する法人によって税収の減少がもたらされ、さらなる財政悪化を招くことにもなりかねません。

 

本来、税制は各国が独自に定めるものであり、どんな税率であっても非難される性質のものではありませんが、タックス・ヘイブンは結果として他国に不利益をもたらす存在となっているのは否めません。

 

また、タックス・ヘイブンを利用している法人にとっても、目先の利益ばかりにとらわれると、本来納付すべき税金を回避していることが消費者などから非難を受け、ブランドイメージを毀損する可能性もあります。

 

節税と租税回避、脱税の違い

租税回避は倫理的に非難されることはあっても、そもそも違法行為によって税の負担を軽減しているわけではないため、脱税にはあたりません。

一方でその手法は一般的な常識の範疇とはいえない部分もあることから、合法的に税の負担を軽減する節税ともやや異なります。

 

つまり、タックス・ヘイブンにより租税回避は、違法行為とはいえないまでもいわゆるグレーゾーンと表現せざるをえないでしょう。

 

日本におけるタックス・ヘイヴン対策税制

このように、グレーゾーンの色合いの濃いタックス・ヘイブンに関しては、国もそれを黙認しているわけではありません。

しかしながら、日本における税制は法律によって定められているもの以外は課税対象にならないという、「租税法律主義」のスタンスをとっているため、かつては租税回避に対して、追徴課税を課すようなことはできませんでした。

 

しかし、1978年、「外国子会社合算税制」(タックスヘイブン対策税制)が制定され、タックスヘイブンを利用していても、法人の場合は課税所得、個人の場合は雑所得扱いとなりました。

さらに、2017年度の税制改正によって、より課税の公平性が保たれるような内容に変更されています。

https://pixabay.com/

出典:https://pixabay.com/

 

 

海外法人の設立の本来の目的はビジネスチャンスの拡大

海外法人の設立に関しては、ここまでみてきたとおり、租税回避が主な目的となることが少なくありません。

 

しかしながら、国による一定の規制は設けられていて、外国子会社合算税制以外にも、租税回避を防止するためにさまざまなルールがあります。ただし、中には形式的な要素が強いものもあり、租税回避目的のみで海外法人を設立するのであれば問題はありますが、一定の節税効果は期待しながら、事業活動の拡大を目指して海外法人を設立するのであれば検討の余地はあります。

 

このため、海外で法人を設立することは、日本よりも規制が厳しくないことから、グローバルビジネスを展開し、ビジネスチャンスを広げるきっかけともなるでしょう。

 

また、アメリカではすでに法人税率が引き下げられ、フランスでも税率の引き下げの動きがあるといったように、タックス・ヘイブン以外の国々でも減税競争が激しくなっています。そこで、今後海外法人を設立する場合には、これらの動向を注視していくことも大切です。