関税とは|仕組みや種類、計算方法などについて

2019.01.07

関税とは|自国産業の保護や市場経済の混乱を防止する

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関税とは、ひとことでいえば輸入品にかかる税金のひとつです。

このような制度が定められているのは自国の税収を上げるためでもありますが、最も大きな目的は自国の産業保護や市場経済の混乱の防止にあるといえます。

たとえば、自国より安い人件費と生産コストによって製品を製造できる国から関税のかからない状態で輸入されると、その国の産業構造によっては特定の分野が消滅してしまうことも考えられます。すると単に雇用機会が消失するばかりでなく、将来的にその分野の製品はすべて輸入に頼らざるを得なくなってしまいます。

このため、各国では品目と原産国ごとに個別の関税率を設定し、国内の産業を保護しているのです。

 

ただし、過度な関税は自由な貿易に反対し貿易を制限する保護主義に陥り、貿易が停滞して自国経済は内需のみに頼らなければならなくなってしまいます。つまり関税は自由化と保護主義のバランスを取ることが最重要であるといえます。

 

 

関税の機能|国の財源でもあり国内産業を保護する関税

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一口に関税といってもその範囲は非常に広く、奥が深いものです。これは関税が自国だけでなく貿易の相手国も関わってくる性質を持っているためで、日本においては「関税法」と「関税定率法」が基本となって定められています。

 

また、世界的な枠組みではWTO(世界貿易機関)の加盟国との共通ルールにのっとって関税制度が設けられています。経済や国際事情、産業の動向によって特例が設けられることも少なくありません。

 

そこで詳しく関税をみてみると、以下のような3つの機能を有しています。

 

1.国の財源

冒頭でも触れたように、関税はその国が課す国税であることから、その税収は国の財源となります。

ただし、現代においてはかつてほど財源として期待されなくなっており、税収の割合としては減少しています。

 

2.国内産業の保護

現在、関税の主な目的は産業の保護にあり、海外から輸入される廉価な製品などに関税を課すことによって、国内産業を保護しています。

ただし、諸外国との関係も考慮しなければならないことから極端に高い関税を課すことはできず、一定の数量までは低税率かあるいは無税の一次税率が採用され、これを超えると税率の高い二次税率が適用されるといった措置がとられているのが一般的です。

 

3.アンチ・ダンピング

輸出国の国内価格よりも安価な輸出品が輸入国の産業に影響を与えることを「ダンピング(不当廉売)」といいます。

関税の主な目的は国内産業の保護であるため、これを脅かすような輸入品に対しては「アンチ・ダンピング関税」と呼ばれる特別な関税が課されることがあります。

 

 

関税はだれがだれに払うのか

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各国で原産国や輸出国、品物の種類に応じて関税率を定めて、品物を輸入する際に税金として課される「関税」。通常、これは輸入者が輸入国の税関に対して支払いますが、貿易条件に応じて輸出者が負担することもあります。

しかしながら、多くの国では無税の品目を除いて関税を支払わないと物品は輸入者に受け渡してもらうことができないことが多いため、一般的には運送業者(Forwarder)や通関業者が関税を立て替えることも少なくありません。

とはいえ関税は、結果として「輸入者」か「輸出者」がその物品を「輸入する国」に対して支払うものであることに変わりはありません。輸入国に対して関税を負担するのは輸出者側なのか、それとも輸入者側なのか、事前に貿易条件を設けておく必要があります。

 

また、日本以外では輸出関税が課される国もあり、そうした場合には、輸出品に関しても「輸出者」が輸出元の国に対して関税を支払う必要があります。

 

 

関税を課す国が有する『関税自主権』とは?

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ここまで、関税はどのようなものかについて触れてきましたが、そもそも関税を課す場合には、その国が「関税自主権」を有していなかればなりません。ところが、かつて日本には関税自主権がありませんでした。

 

関税自主権を持たないと、貿易で大きな不利益を被る

では、関税自主権を有していないとはどういったことなのでしょう。

 

そもそも関税自主権とは、輸入品に対して自国が関税率を自由に定め、関税を決定することのできる権利のことを言います。

しかし、「関税自主権を持たない」というのは、自国で税率を決めることができず、他国が自由に税率を設定できるということではありません。

 

関税自主権がないということは税率を改訂する必要がある場合などに他国と交渉を行っても、自国にはそれを決定する権利がないということになります。つまり、これだけでも、貿易においては大きな不利益を被ることには違いありません。

 

関税自主権の歴史

日本では1858年、江戸幕府によってアメリカ、オランダ、ロシア、イギリス、フランスの5ヶ国とそれぞれ条約を結んだことが、関税自主権の歴史を知る上での最初の出来事となります。この条約は、総称を安政五ヶ国条約といい、不平等条約とも呼ばれていますが、不平等といわれるひとつの要因となっているのが関税自主権の欠如です。

 

安政五ヶ国条約では、輸出税は一律5%、輸入税は金銀、居留民の生活必需品などの1類が無税、船舶用品・食品・石炭などの2類が5%、酒類にあたる3類が35%、その他の4類が20%と定められました。

 

この税率自体は日本にとって著しく不平等とはいえないものでしたが、日本には関税自主権がないため、その後の改訂協約によって、それまでは価格に対する割合で課税される方式であったものが、重量などの量を基準とする方式に変更されてしまいます。

 

この方式では、価格が高く軽い物品を輸入するには有利ですが、価格が低く、重いものを輸入する場合には不利になってしまいます。そこで当時の明治政府は、関税自主権回復を目指しました。

 

そして、最初に日本が関税自主権の回復ができたのは日露戦争後のことで、ロシアと1907年に締結した「日露通商航海条約」です。その後、1911年にはアメリカをはじめとした他の列強国とも平等条約を締結することにより、日本の関税自主権は回復されました。

 

 

関税はどのような条件で課されるのか?

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では、実際に関税が課される条件とはどのようなものなのでしょう。

これは、「何を」「どこから」「どのような目的で」輸入するかによって異なってきます。

 

何を:製造工程や製造方法、材質が関税率を決める要素になる

関税の割合である関税率は、どのような物品を輸入するかにより異なります。たとえば、製造工程や製造方法、材質などが関税率を決定する要素となります。

 

どこから:開発途上国・地域が原産地となっている物は低い税率が適用されることも

輸入する物品は、どこから輸入するかによっても関税率が変わってきます。たとえば、開発途上国や開発途上地域が原産地となっている鉱工業産品および農水産品の輸入については、一般の関税率よりも低い税率が適用されています。

 

また、お互いの貿易や関税などのルールを自由化しているEPA(経済連携協定)締結国であれば、一般的な関税率よりも低い関税率の適用が認められています。

 

 

関税の計算方法には様々なルールがある

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ここまで関税はどのようなものかについてみてきましたが、実際の計算はどのように行えばよいのでしょうか。これにはさまざまな考え方や、ルールがあります。

 

1. 外国通貨を円に換算

関税を計算するにはまず外国通貨を日本円に換算しなければなりません。このとき、レートの基準となるのは、外国為替相場のレートに必要な調整をした税関のサイトで発表されている、「公示レート」です。

・物品価格(外国通貨)×公示レート=物品価格(日本円)

 

2.費用の合計額を計算

物品を輸入する際には物品の価格に海上運賃、海上保険などの諸経費を加算した「CIF(Cost, Insurance and Freight)」が申告価格となります。

また、物品価格同様、海上運賃や海上保険についても日本円に換算する必要があります。

・物品価格+諸経費=CIF価格

 

3.按分

関税率は輸入する物品の種類によって異なるため、さまざまな種類の物品がある場合、高い関税率の物品に諸経費を加算してしまうと、関税額が高くなってしまいます。

そこで、物品の価格割合によって、商品の合計金額をそれぞれに振り分けます。これを「按分」といいます。

・個別の物品価格÷物品の合計額=個別の物品に加算する諸経費の割合

・個別の物品価格+(個別の物品に加算する諸経費×諸経費の割合)=個別の物品のCIF価格

 

4.1,000円未満を切り捨て

CIF価格は1,000円未満を切り捨てます。そしてこれが関税額を算出する課税母体となります。

 

5.関税額を算出

課税母体となる個別のCIF価格に物品ごとの既定の関税率をかけて個別の関税額を算出したら、次にそれぞれの関税額を合計し、100円未満を切り捨てます。これで納付すべき関税額の合計が算出できます。

・個別のCIF価格×物品ごとの既定の関税率=関税額

・それぞれの物品の関税額の合計→100円未満を切り捨て=関税額の合計

 

 

関税を計算する上で必要になる関税率の調べ方

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では、それぞれの物品に課される関税を計算するうえで必要となる、関税率はどのように知ることができるのでしょう。これには「実行関税率表」と呼ばれるものを読み解かなくてはなりません。

 

関税率を読み解く『実行関税率表』とは

実行関税率表は輸入統計品目表とも呼ばれ、貿易で取引されている物品のすべてのHSコード(輸出入統計品目番号)が記載されているものです。

HSコードとは、世界各国の税関で通関を行う際に素材や使用目的によって割り振られた番号のことで、税番とも呼ばれます。実行関税率表ではすべてのHSコードが一覧となっていて輸入通関時に適用される関税率を知ることができます。

現在では税関のサイトにも掲載されていて、誰でも閲覧が可能です。

 

関税率は複数存在し、優先順位が決まっている

輸入する物品に課される関税率には複数あり、輸入通関時に適用される優先順位も決まっていて、これは実行関税率表にも記載されています。

例外はEPAを締結している国から輸入される物品で、個別に設定されるEPA税率がある場合には、優先順位の高い税率とEPA税率を比較し、税率が低い方が適用されます。

 

では輸入通関時に適用される優先順位ごとに、複数の関税率をみてみましょう。

・基本税率(General)

関税定率法により、あらゆる輸入品目に定められている税率です。

・暫定税率(Temporary)

関税暫定措置法により、一定期間に輸入される特定品目を対象としてる暫定的な税率です。

・特恵税率(GSP:Generalized System of Preferences)

関税暫定措置法により、開発途上国あるいはそのような地域を原産地とする特定の輸入品について適用される税率です。一般の関税率よりも税率が低く設定されています。

・特別特恵税率(LDC:Least Developed Country)

関税暫定措置法により、国連が定めた後発開発途上国を原産地とする輸入品について、適用される税率です。税率は全てゼロとなっています。

・WTO協定税率(協定税率)

WTO協定の譲許表により、WTO加盟国を原産地とする輸入品について、それ以上の関税を課さないことを約束した税率です。

・経済連携協定税率(EPA税率)

日本と特定の国との間で締結されたEPAによって定められた税率です。当該国を原産地とする輸入品については協定によって締結したスケジュールにしたがって関税が削減あるいは撤廃されます。

 

 

課税価格が20万円以下の場合に適用される『簡易税率』

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商業目的の輸入では1回で輸入する課税価格が20万円を超える場合が多いため、関税はここまでのような計算方法や関税率に基づいて課されますが、これは「一般税率」と呼ばれます。

一方、関税率には主に国際郵便や国際宅配便で輸入される課税価格が20万円以下の場合に適用される、「簡易税率」というものもあります。

 

簡易税率のメリット

一般税率では難解な関税率表を読み解いておよそ9,000種類もある関税率の中から適切なものを探さなければなりませんが、簡易税率であれば、7つの大まかな税区分の中から税率を選択することができます。

一般税率のように、適正な輸入申告をする目的で通関業者を依頼する必要もありません。

 

また、簡易税率を用いて物品を輸入する場合には、必要証明書類が免除され、この書類にはEPA締結国からの輸入品であることを証明する「特定原産地証明書」などがあります。

 

簡易税率のデメリット

輸入においては、1回で複数の貨物を輸入することが多いため、大まかな税区分をしている簡易税率でも物品によって税率が異なることがあります。

この場合、複数の物品の中で最も高い関税率がすべての物品に適用され合算申告となる可能性が高くなります。このため、あらかじめ、計算していた関税額と異なる場合も少なくありません。

 

ただし、課税価格が20万円以下の場合であっても、輸入者自身が希望すれば、簡易税率ではなく、一般税率を適用して輸入することも可能です。

 

 

個人輸入と小口輸入の違い

課税価格が20万円以下の少額の輸入では簡易税率を適用することができ、輸入の際の手続き上の負担などを軽減することができるものを「小口輸入」といいます。とはいえ、小口輸入では少額の輸入であるということ以外は一般的な輸入と同じように輸入申告が必要であり、食品や薬品といった一部品目では許可や届け出が必要となり、関税の計算方法も同様です。

 

一方で、輸入者本人が使用する目的の輸入を「個人輸入」といいます。個人輸入の場合、物品の価格に0.6をかけることができ、送料や保険料は課税対象外となる減免措置があり、税制上優遇されています。

 

ただし、個人輸入した物品は商用目的で利用することはできません。つまり、関税を逃れる目的でもともと商用の物品を個人輸入するのはもちろんのこと、オークションサイトなどでの転売や、輸入した物品を何かの原材料として使用するような行為も一切認められていないのです。

 

 

外国貨物には関税だけではなく消費税もかかる!

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外国貨物には関税だけでなく、原則として消費税がかかります。

外国貨物とは厳密には保税地域から引き取られる物品のことですが、この保税地域とは、外国貨物を外国貨物のまま置くことができる場所のことをいい、海外から輸入される物品であれば輸入許可を受ける前の貨物を指します。

 

輸入品の消費税

輸入品に関しては輸入品を引き取る者が消費税の納税義務を負い、消費税を計算する際の算定基準となる課税標準は、CIF価格に、消費税以外の関税と個別消費税の額に相当する金額を加算した合計額となります。

 

輸入品に対しての消費税の計算方法

消費税は、8%のうち6.3%が内国消費税、1.7%は地方消費税となっているため、具体的な計算方法は、内国消費税の場合、端数を処理していないCIF価格と千円未満切り捨てた関税額を合計したうえで100円未満を切り捨てて課税されます。

また地方消費税については100円未満を切り捨てた内国消費税額の17/63で計算されます。

・CIF価格+関税額×内国消費税率(6.3%)=内国消費税額

・内国消費税×17÷63=地方消費税額

 

関税が課されない場合も消費税は課される

このとき注意しなければならないのは、関税を課されない品目についても消費税は課されるということです。

そもそも関税は国内産業を保護するための税金であり、消費税は国内で流通しているすべての商品にかかる税金です。このように税金としての性質が異なることから、関税が課されない場合であっても、消費税は課されます。

つまり、関税が課されないからといって、消費税も課されないと考えてはいけません。

 

 

関税等税金が免除となる16,666円以下のルール

関税は、一定の条件を満たす場合に免除されることがあり、その条件は消費税にも当てはまります。要するに、この条件を満たしていれば、原則として税金は一切免税になるということになります。

それが、インターネット上などで時折見受けられる、「16,666円以下の輸入品であれば税金が課税されない」という文言です。

 

この根拠となるのは「関税定率法14条18項」によるものですが、実際に課税されないのは、輸入者個人が使用する物品に限られ、商用目的では適用されません。

 

つまり、正確には課税価格の合計額が1万円以下の品物については関税と消費税が免除されるのですが、輸入者個人が使用する物品は個人輸入に当たり、物品の価格に0.6をかけたものが課税価格となるため、実質的に16,666円以下の物品について免税となるのです。

・16,666円×0.6=9,999円

 

 

関税に関する理解を深めておく

関税にはさまざまなルールや定義があります。これは自国の産業を保護することが大きな目的のひとつですが、近年ではインターネットが急速に普及したこともあり、輸入ビジネスなどに携わる場合はもちろん、個人輸入の場面などで日常生活に関わってくることがあります。

 

このため関税の仕組みには難解な部分があるものの、どのような物品にどのような計算をして、どのように課税されるのかをきちんと理解しておかなくてはなりません。