越境ECとは|メリットやデメリット・はじめ方まで

2018.09.18

越境ECは新たな市場開拓の可能性を秘めている

ECとは正式にはElectronic Commerceといい、インターネットサイトなどで商品を販売するオンラインショップのことを指します。

また、国境を越え、海外に商品を販売するオンラインショップは、「越境EC」あるいは「海外EC」と呼ばれています。

現在、インターネットは世界中に急速に普及しており、これを活用することによって世界中のあらゆる場所から商品を購入することができます。

これは別の見方をすれば、世界中どんな場所にいても、商品を販売できるということにほかなりません。

 

さらに、日本では近年訪日外国人が増加して、インバウンド市場が急速に拡大していますが、これによって日本を訪れた際に購入された商品が評価され、日本製品が越境ECを利用してリピート購入するという流れも起こりはじめています。

つまり、越境ECは、これまでになかった未知の市場を開拓し、新たな顧客を獲得できる可能性を秘めているのです。

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越境ECは人口減少時代における注目のビジネスモデル

インターネットは世界中に普及したとはいえ、アジアやアフリカ諸国の中にはまだまだ普及率の低い国々も少なくありません。

そこで、これらの国々に将来的にインターネットが普及していくことを考えると、越境ECはさらにビジネスチャンスを拡大する可能性があります。

 

近年の日本では人口は横ばいで推移し、今後減少に転じ国内消費も減少していくことが予想されますが、越境ECによって海外市場を開拓することで、これを補うひとつの手段となるかもしれません。

 

 

越境ECの市場規模は日本国内よりもはるかに大きい

経済産業省の調査によれば、2010年の日本におけるECの規模はおよそ7.8兆円で、2015年にはおよそ13.8兆円と、国内のみでも5年間で約1.8倍に成長しています。

 

このように、ECは日本国内だけを見ても市場規模が拡大していますが、越境ECに視点を転じると、2015年で日本が推計およそ2,200億円、アメリカが推計およそ9,000億円、中国が推計およそ1.6兆円となっています。

このうち、日本からの購入額だけを見てみるとアメリカはおよそ5,400億円、中国はおよそ8,000億円と、両国とも日本からの購入額の割合が高いことがわかります。特にアメリカはその傾向が顕著で、中国も高い伸び率を示しています。

 

 

越境ECの今後の動向

現在の動向を見てもわかるように、越境ECはこれまで拡大の傾向が続いていますが、今後はどのような推移が予想されるのでしょうか。

 

前出の経済産業省の報告では、あくまで推計ではあるものの、将来的な市場規模は、アメリカ市場においては2019年には2015年と比較して約1.6倍となるおよそ1.4兆円、中国市場は約3倍となるおよそ4.8兆円に膨らむと予想されています。

このような伸び率が実現した場合には、アメリカの越境ECの規模は日本の4倍以上、中国にいたっては14倍以上という大きな市場に拡大することになります。

 

さらに中国では2014年時点で総人口に対するインターネットの普及率が50%程度と、日本やアメリカの約80%と比較するとまだまだ拡大の余地があり、中国が越境EC市場を牽引すると予想されています。

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越境ECのメリットとデメリット

国内消費が鈍化したことによる経済活動の停滞感が否定できない日本にとって、今後大きな期待が寄せられる越境ECは非常にメリットが多いものです。

しかしデメリットも存在するため、その両面を見てみましょう。

 

越境ECのメリット

越境ECがもたらすメリットは、商品の販売する地域や国を限定せず、新たな顧客を獲得できることですが、決してそれだけにはとどまりません。

 

まず、ECはそもそも、オンライン上で商品を紹介して、注文を受けてから発送するという販売手順のため、在庫リスクを抱えるということが起こらないのが特徴です。

そして、実際に店舗を海外に出店する場合であれば、大きなコストがかかるのはもちろんのこと、運営の負担も日本国内とは比較にならないほど大きなものとなりますが、越境ECであれば初期費用を低く抑えられるため、負担が大きくなったり、コストがかさむこともありません。

このように、越境ECの場合、大企業と比べて多額の投資が難しい中小企業などであっても、海外の消費者や企業と直接取引することができ、海外進出の足がかりに有効な手段となりえるのです。

 

さらに、近年では日本国内にすでにECサイトを持っていれば、越境ECを手軽に開始できるようなサービスを提供している業者も多いことで、越境ECへの参入のハードルも低くなっています。

このほか、アジア市場においては日本製品に対する評価が高いことや、日本にとってはECの巨大市場である中国との距離が近いという地理的要因も越境ECをおこなうにあたっては有利に働くと考えられます。

 

また、消費者にとっても、わざわざ現地に足を運ぶことなくさまざまな商品を手軽に手に入れることができる越境ECは、利便性の高い購入手段といえるでしょう。

 

越境ECのデメリット

今後まだまだ拡大が続くことが予想される越境ECですが、注意しなければならないことも少なくありません。

 

まず、最初のハードルとなるのは、言語や決済方法、発送手段などが日本とは異なるということです。

このため、商品説明の翻訳に時間がかかったり、決済の方法を現地のものに対応させなければならなかったり、荷物の取次や税関などについて専門的な知識が必要となります。

また、現地生産された商品を販売するのでない限り、通常は取引の手順や、輸送コストが国内でECをおこなうよりも増加します。

 

そして、越境ECにおけるもっとも大きなデメリットは商品や代金回収のリスクです。

日本国内であれば、代金引換サービスなどを利用してこうしたリスクを軽減することができますが、海外ではそうしたサービスが存在しないため、支払いに偽造されたクレジットカードや他人のクレジットカードが不正使用されたりすることなどが懸念されます。

 

このほかにも、各国の国民性の違いなどからコミュニケーション上のトラブルが発生したり、外貨決済による為替変動のリスクや、手数料などの発生も考慮しなければなりません。

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越境ECをはじめるには

ここまでのように、さまざまなメリットがある一方、リスクもはらんでいる越境ECですが、実際に参入する際には、これらに対する対策や、必要な手順をクリアして事業に参入することになります。

では、実際に越境ECをはじめるにはどうしたらよいのでしょう。

 

越境ECサイト出店の方法

越境ECにおいて、ECサイトを出店するにはいくつかの方法が考えられます。

まずオーソドックスなのは、現地法人を設立したり、自社の販路をグローバル対応するものですが、これらはやや難易度が高めです。

 

一方、日本国内モールサイトの中には海外対応済みのモールが存在するので、こうしたモールを利用すれば、比較的簡単にECサイトを出店することができます。

 

また、出店を計画する現地のモールサイトに出店する方法もあります。この方法なら、難易度もさほど高くないと同時に、現地ルールに沿った運営が可能で、現地の消費者も慣れている決済方法や出荷システムを利用できるため、売上拡大を目指しやすいといえます。

 

越境ECではターゲットの絞り込みが重要

日本国内でECをおこなうのと比較すると、越境ECははるかに大きな市場規模となりますが、単により多くの消費者に商品を販売すればそれに比例して売上げも増加するという考え方は間違いです。

ターゲットや手法があいまいなままで越境ECを展開しても、無駄な労力やコストが増大するだけだからです。

 

越境ECをはじめるにあたっては、商品の需要が見込まれる国や地域の選定にはじまり、商品の好み・容量・数量といった、購買行動や消費行動の特徴を把握しなくてはなりません。

また、このときに販売する国や地域の言語や、為替変動の影響なども考慮しておきましょう。

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越境ECサイトで需要のある商品は国や地域によって異なる

越境ECにおいては、商品を販売する国の国民性によって消費行動も異なるため、現地の情報を収集しながら、取り扱う商品の選定をすることが大切です。

ただし、多くの国々で共通して購入者が多い商品ジャンルはアパレルで、特に国や地域によって異なるのはこれ以外の商品です。

 

例えば日本においてEC市場で多く購入される商品は旅行や本、音楽、映像商品などですが、アメリカにおいてはこれに加えてデジタルゲームやホビーなどが好まれる傾向にあります。また、中国では、化粧品やコスメ、食品、アルコール類などが多く購入されています。

さらに、海外で日本製品を購入する消費者は、日本でしか買えないもの、日本で買ったほうが安いもの、そして信頼できる日本製品を求めているといわれています。

 

越境ECにおいて取り扱いが規制される商品

現地のニーズを把握することは越境ECにおいては重要ですが、販売する品目によっては各国の規制などによってそもそも輸出入が難しい商品もあります。

このため事前の調査や情報収集、場合によっては国内外の各機関への確認や手続きが必要です。

 

例えば、海外に商品を販売する際に日本から輸出の規制の対象となるのは、ワシントン条約の対象となっている商品や、ダイヤモンドの原石、インク類などで、これらは輸出入をおこなう際に必要な一連の手続である通関で特別な手続きをしなくてはなりません。

また、花火やバッテリーなど、国際航空運送協会が危険物と規定している物品なども発送ができません。

 

そして、特に農産品や植物は輸出先の国々によって検疫条件が異なります。

各国への輸入に関しても、アメリカであれば、農林水産物や食品は輸入禁止や輸入制限が生じ、化粧品も法定基準を満たさないものや表示が不正な商品は輸入禁止、医薬品も許可がないと輸入できないなど、さまざまな規制があります。

 

また、中国でもECサイトにより、規制取扱商品の管理規定を定められているなど、どの国においても輸入品は何らかの規制を受ける可能性があると考えたほうがよいでしょう。

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越境ECで商品を配送する3つの方法

では実際に商品を海外の消費者に商品を配送するためにはどうしたらよいのでしょう。越境ECにおいては主に3つの方法が考えられます。

 

まず、すでに現地で認知度が高く、参入当初から一定規模以上の売り上げが見込めるのであれば、現地において代理店と提携したり、アウトソーシングを利用するなどして物流拠点を確保し、商品を配送するのが納期や送料の面などから見ても最適です。

しかし、多くの場合、事業者から消費者に直接配送するか、出店するECモールが提供する物流サービスを利用するのが一般的です。

そこで直接配送する場合には、日本郵政の提供する国際宅配サービスである「EMS」などを活用すれば初期費用がかかりません。

 

また、ECモールの物流サービスを利用する場合は、モールが用意している物流拠点に商品を送付し、その先はモールが提携している物流業者が配送を代行してくれます。

この方法であれば、事業者は日本国内のECの延長線上で配送業務がおこなえるため、少ない負担で商品を消費者に届けることができます。

 

ただし、これら3つの方法では、それぞれ、物流拠点を確保する場合には初期投資、在庫リスク、維持コストなど費用の増大、直接配送では1回あたりの送料が高くなることや、通関を事業者自身がおこなわなければならないこと、ECモールの物流サービスでは物流拠点を介すために納期が長くなってしまうといったマイナス面も考慮しなくてはなりません。

 

越境ECにおける決済方法は国によって異なる

日本国内のECではクレジットカードなどで対応できる決済も、越境ECにおいては現地の決済方法に対応する必要があります。

代表的なところでは、アメリカにおいて9割を占める決済方法となっているのが自国発のID決済サービスである「PayPal」です。

 

また中国では、決済と同時に預金から引き落とされる日本の「デビットカード」と同様の「銀聯(ぎんれん)カード」が30億枚以上が発行されていて、中国人向けの越境ECでは欠かせない決済方法といわれています。

このように、越境ECを展開する際には、現地においてどのような決済方法で対応しなければならないか、事前に調査をおこなう必要があります。

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越境ECにおける関税は各国さまざま

2017年、日米を含む12カ国では関税撤廃に向けてTPP(環太平パートナーシップ)が大筋合意にいたり、これらの国々では5年をめどに段階的に関税が撤廃となるとされていますが、現時点では越境ECにおいても関税を考慮しなければなりません。

関税は輸入する商品の価格を制限することで自国の産業を国際的な競争から守るもので、商品の種類によっては高額の関税がかかり、それによって取り扱い商品の見直しを迫られることもあります。

 

例えばアメリカであれば輸入量と輸入価格に基づき関税率が定められていて、輸入者が関税率表に従って自己申告で納税します。

 

また、中国では、越境ECサービスの試験地となる「保税区」に「行郵税」と呼ばれる新たな関税が設けられ、商品カテゴリーごとに税率が示されています。

 

このような関税は、購入者が負担することになりますが、品目などによって高額になる場合、受け取りの拒否や返品といったトラブルにつながる恐れもあるため、事前に見込み額の表示するなどの対策が必要です。

 

越境ECにおける消費税は還付が可能

日本国内のECであれば、事業者が商品を仕入れる際には消費税が課され、販売した際には事業者が消費者から一時的に預かるかたちでのちに一括で納税しなければなりません。

ただし、越境ECでは輸出先である海外から税法上日本の消費税を徴収できないため、事業者が所定の手続きをおこなうことで、仕入れの際の消費税が還付されることになっています。

しかし、実際に消費税分が還付されるのは通常数か月かかるため、利幅の少ない商品を扱っている場合などには8%という消費税の税率が資金繰りの悪化などにつながりかねません。

そこで、消費税の還付は年1回ではなく、毎月でも可能なことから、こまめな申請をすることで、資金繰りに有利に働くこともあります。

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越境ECはビジネスチャンスを拡大する有効な手段

ここまでのようにECにおいては、世界に向けて商品を販売し、売上げの拡大が見込める越境ECが大きな注目を集めています。

また、現在のところ、越境ECは企業が一般消費者を対象におこなうBtoCが一般的ですが、徐々に企業同士のBtoB、消費者同士のCtoCなどにも広がりを見せつつあります。

 

さらに今後は、越境EC向けの新しいサービスや支援がはじまることも予想されることから、越境ECはビジネスチャンスを拡大する有効な手段となりえるかもしれません。